評価損益
企業はたくさんの資産をもっていますが、棚卸資産や有価証券、固定資産を長期間使用または保有し続けることで生じる価値の減少は、会計上と税務上で取り扱いが異なり、また、さまざまな判断が必要になります。
会計上は時間経過による劣化や、新製品の販売による価値の減少を「評価損」として計上します。
税務上は原則として評価損は損金(税務上の費用)に算入できませんが、例外もあります。それは、特定の事情により資産の価値が減少した場合です。
評価損に係る税務調整
- 評価損超過額が生じた場合(会社計上評価損>評価損計上限度額)
評価損否認(加算)=会社計上評価損-評価損計上限度額
※減価償却資産については、「評価損否認」を「償却費として損金経理した金額」に含め、減価償却超過額として税務調整されます。
- 評価損不足額が生じた場合(会社計上評価損<評価損計上限度額)過年度に否認額がない場合
評価損計上限度額に満たない金額は切捨てられます(調整なし)過年度に否認額がある場合
①評価損計上限度額-会社計上評価損=評価損不足額
②過年度から繰り越されている否認額
③①と②のいずれか少ない金額(=当期認容額)(減算) - 評価損計上限度額
評価損計上限度額=評価換え直前の帳簿価額(※)-時価(処分可能価額)
※過年度に否認額がある場合には「会計上の帳簿価額+繰越否認額」となります。
※減価償却資産について評価損と減価償却費の両方が計上される場合は、減価償却費の計上が先に行われたものとして償却限度額を算定します。
評価損の計上が認められる一定の事実
- 棚卸資産
①災害により著しく損傷したもの。
②経済的な環境変化により著しく陳腐化したもの。※1
③会社更生法等に基づくもの。
④上記に準ずる特別の事実が生じたもの。※2※1 著しい陳腐化とは、資産そのものに欠陥が生じたわけではないものの、経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、今後回復しないと認められる状態にあることをいいます。
著しい陳腐化の例としては、以下のものが挙げられます。(ア)いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないこと
(イ)同用途の新製品が発売され、通常の方法により販売することができないこと※2 ④の「準ずる特別の事実」としては、以下の理由により、通常の方法によって販売することができないようになったことが挙げられます。準ずる特別の事実に該当するもの
破損、型くずれ、たなざらし、品質変化準ずる特別の事実に該当しないもの
物価変動、過剰生産、建値の変更等 - 有価証券
①上場有価証券又は店頭売買有価証券等(一定の株式を除く※1)の価額が著しく低下※2したもの。
②①以外の有価証券の場合は、その発行法人の資産状態が著しく悪化※3したため、有価証券の価額が著しく低下※2したもの。
③会社更生法等に基づくもの。
④②又は③に準ずる事実が生じたもの。※1 一定の株式とは、法人の特殊関係株主等が発行済株式総数の20%以上を有する場合の株式
※2 時価が帳簿価額のおおむね50%を下回ったこと及び近い将来、価額の回復の見込みがないこと
※ 取得した相当期間経過後に整理手続が生じたこと又は期末時1株当たりの純資産価額が、取得時の純資産価額のおおむね50%以上下回ったこと - 固定資産
①災害により著しく損傷したもの。
②1年以上遊休状態であるもの。
③本来の用途に使用できず、他の用途で使用されたもの。
④所在場所が著しく変化したもの。※1
⑤会社更生法等に基づくもの。
⑥上記に準ずる事実(※2)が生じたもの。※1 「所在場所が著しく変化したもの」とは、地盤沈下や土壌汚染などが生じたことで地価が下落した場合などをいい、リーマンショックのような経済環境の悪化による地価変動などは含まれません。
※2 固定資産について、評価損の計上が認められない事実として、次のものが挙げられます。
(ア)過度の使用又は修理の不十分等により当該固定資産が著しく損耗していること
(イ)当該固定資産について償却を行わなかったため償却不足額が生じていること
(ウ)当該固定資産の取得価額がその取得の時における事情等により同種の資産の価額に比して高いこと
(エ)機械及び装置が製造方法の急速な進歩等により旧式化していること
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